ゆでガエルはゆだりながら日記

ゆだりきったら左様なら。

高校社会科における「小難しい用語」について。

こんにちは。

 

この時期,いろんな学校で入試なるものが行われているようですね。私の親戚の子どもも,それぞれ中学受験だの高校受験だのしているようです。まだまだ頑張っている受験生は,最後までしっかり力を出していってもらいたいと思います。がんばってね

 

さて,今回は割とお勉強な感じの内容にしてみようと思います。

といっても,私がお伝えできるのは,せいぜい歴史がらみのことです。

 

高校に入ると,世界史だの日本史だのといった形で,これまで勉強してきた「歴史(中学歴史)」がさらに細かくなってきます。それも,単に内容が細かいだけでなく,やや本格的な=学問的な=小難しい「歴史用語」が数々登場してきます。

ここでは,そういった小難しい用語について綴っていきたいと思います。

 

高校での勉強では,「小難しい用語」が歴史科目に限らずあちこちで登場してきます。しかし,普段の授業ではこういう用語のほとんどは授業でまともに取り上げられることはなく,特に社会科では(テストに向けて)「覚える」ことで事足れりという事になってしまったりしていないでしょうか。

用語がわからないのに「覚えた」だけで「わかった」ことにされてしまったら,生徒が「深い理解」をすることなどできません。けれど下手をすると教える側の方も実はよくわかっていなくって,だから特段説明することなくスルーされてしまったりすることを心配します。

 

具体的な例を挙げましょう。ときどきこんな質問を受けることがあります。

 

社会主義って,民主主義と両立しないですよね?

(もっと「ナマな感じ」で再現すると,「社会主義って,民主主義じゃないですよね?」)

 

若い先生にお伺いしたいのですが,この質問に対して,きちんと説明できますか?

まず,この質問,私などは聞いた瞬間「うっそー」と青ざめてしまいます。

そりゃそうですよね,むしろ社会主義体制の国ほど,「民主的である」ことを強調していませんか。

※特に冷戦期のドイツや朝鮮を中心に,「人民」または「民主」という言葉を国名としているほうが社会主義国でしたよね。

 

けれどもこの子は,今や日本を超える経済大国となったアジアの某国とか,若い3代目が何やらあれこれお騒がせのアジアの某国とか,そういう国にまつわる報道などを見て,「社会主義国は民主主義的じゃない(社会主義国においては民主主義国家において当然守られるべき人権が軽視されている,ということの高校生的表現)」と思うわけですね。

それはそれで,たしかにそうでしょう,わかります。だから,こういう質問をする子は,割と真面目に勉強したい,ちょっと「意識高い系」だと思います。

 

なんでこんなことになるのか。なんでこんな質問が生まれるのか。

私が思うに,「〇〇主義」という言葉を,無理して使おうとしているのではないかと。

これから大学でさらに一生懸命勉強していこうという子ほど,「〇〇主義」という言葉に振り回される,というのが個人的な経験です。「自由放任主義」「帝国主義」といったイカメしい感じだけのものもあれば,「マルクス主義」みたいな人名に基づくもの,「ロマン主義」みたいに芸術のスタイルを表すもの,などなど,そもそも「主義」という言葉が包摂する範囲が非常に広範であるが故に,用語の概念把握が至難であるのです(カバーする範囲がとっても広いので,意味を理解するのがすごく大変)。

 

だから,一度その用語の意味を,きちんと用語集なり何なりで調べてみてほしいのです。

ただ,ここでもう一つの問題が。

仮に用語集で調べたとしても,今度はその説明がまた意味がわからんのです。

例えば先に挙げた「帝国主義」の説明は,こんな感じです。

 

1870~80年代以降の,ヨーロッパ列強の対外膨張と植民地・勢力圏の獲得行動

 

『世界史用語集』(山川出版社)より

 

いかがでしょう,これで帝国主義という用語について,理解できたでしょうか。要は,「19世紀末から20世紀初頭までの,欧米列強の外交方針,つまり各国の政策の方針」ということなのですが,「植民地」は良いにしても,「勢力圏」というのはまたこれはこれで説明が必要な言葉です。結局のところ,説明をコンパクトにしようとした努力の結果,一つ一つの説明が難しくなってしまっているのですね。

 

そんなわけで,「平たく言えば,要は~ということだ」という説明がないと,なかなか「用語」の意味する「概念」がわからないということになるのです。

けれど,一つ一つの用語について,噛み砕いた上で整理すれば,理解は決して難しいものではないとも思います。

 

上述の「社会主義と民主主義」を例にとって続けましょう。

まず私は,こういうふうに説明します。

社会主義は,経済の仕組み,あり方についての概念。民主主義は,物事の決め方,政治にまつわる概念。

→だから,この2つを同じレベルで並べても意味がない。

概念の整理

次に,こんなふうに話をするでしょうか。

社会主義経済の国も,民主主義を重視する。実際,国名に「人民」とか「民主」とか入れたがる。

自由主義(資本主義)経済の国でも,民主主義を重視していない国はありうる。シンガポールをはじめ,いわゆる「開発独裁」がその例。

実例の提起

ここで具体的な実例を,どこまできちんと正確に列挙することができるかが,教える側のウデの見せ所だと思います。

 

「◯◯主義」に限らず,高校生を悩ませる小難しい用語はたくさんあります。

今後,折を見てそういった用語について触れてみたいと思います。

 

では。