ゆでガエルはゆだりながら日記

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大学受験・志望理由書の「書かせ方」(実践編)①

こんにちは。

 

巣ごもり生活もすっかり普通のこととなり,IT的なものには全く疎い私もオンラインで仕事するようなことが当たり前になっている今日このごろです。

もっとも,年度替わりであったことも加わってなれないことが重なり,しばらく更新することができませんでした。

そんな中で今週は"stay home"でありますので,この機会に。

 

さて前回,AO受験などにおける志望理由書の書かせ方について,まずは準備編のようなものをまとめてみました

今回は,実際に出願するまでの文章作成についてまとめてみようと思います。

 

では,私の場合の手順にしたがって,やりようをご紹介します

※いつものことですが,あくまで私の場合のやり方です。これが絶対的に正しいとも思っておりませんし,相手(受験生)によってもアプローチが変わることもあります。

 

0.受験の予定を把握する

きちんと相手するにあたって,誰がいつごろ出願なのかを把握する必要があります。これには2つ理由があります。

1つはわれわれサイドに関すること。場合によっては何人も同時並行で相手をしなければならないこともあり,その際にはそれぞれの受験生の進捗状況に応じて一人一人にかける時間や優先順位を変えることもあります。また,少なくとも1カ月前には文章作成に取り掛かりたいもの。締め切り2週間前くらいに突然やってくる受験生に関しては,ことによっては断らざるを得ないかもしれません。そんなときも,「今は誰々が〇にちまで,誰々が×日までの出願で,いまは追加で取り組む余裕がないから他をあたってくれ」といった理由が言えれば,まだ相手も納得できるかもしれません

2つ目は,受験生サイドに関するものです。今述べたような突然の出願というのは,塾や保護者が受験を勧めた場合があり,その際には受験生本人の志望理由が弱いだけでなく,そもそも本人が出願の締め切りすらわかっていないことが経験上よくあったからです。

なお,ここで一つ出願の締め切りに関して大切なことを。ふつう,出願期間というのは「〇月〇日から×月×日まで」という風に,1週間から10日程度の日数が設けられます。その際,焦る受験生(というか保護者)は「出願初日(〇月〇日)に提出したい」と(強く)言ってくる場合があります。しかし,初日に出願しようが,最終日に出願しようが,きちんと形式を整えて出願していれば受験は認められるものですし,早く出願したからと言って合格しやすいわけではありません。したがって,締切日がいつなのか,および「消印有効」なのか「必着」なのかまでを確認させる必要があります。

 

1.まずは書かせてみる

前回,指導にあたっては面談を繰り返すことが大切だということを書きました。とはいえよほどしっかりした受験生でもない限り,この段階で志望理由が明確な受験生はそう多くはありません。

そこで,まずはいったん下書きとして志望理由を書かせてみます。

ちなみに,形式や分量(文字数)についてすでにある程度分かっている場合には,それに従って書かせるほうがベターですが,場合によってはこの段階では特に指定しなくても構いません。しいて言えば,分量については本来要求される分量の1.5~2倍くらい書かせるようにすると,この後のブラッシュアップがよりうまくいくように思います。

 

2.面談とブラッシュアップ

①現状の確認

さてここからが指導のキモです。とりあえず書かせてみたドラフト(下書き)ですが,どんなものだったでしょうか。

この段階で出てくる文章ですが,(あくまで経験上)こんな感じになっていることが多いように思います。

・主張がない,またはあいまい=重要なのは具体性

そもそも「大学に合格する(別に○○大学に実はこだわっていない)」ことが目的でAO受験を考える子は,志望理由がないことが多かったりします。この場合はそもそもなぜこの形式で受験するのか,必要によっては保護者とも話をしたほうがいいかもしれません(しかし,そうはいっても推薦で受験したいという気持ちは打ち消しがたいので,その際は厳しく指導することを保護者・受験生双方に納得させる必要があります(※))。

※こういった場合,そもそも受験生自体に将来像なりアイディアなりがないわけですから,時には厳しく指導することを通じて本人に真剣に考えさせるようなこともあります(本人の根っこに甘えがある場合も多いので,時には突き放したりすることもあります)。そのときに保護者から「指導をしてくれない」といったクレームが入らないようにするための対応です。

 

一方で,ある程度考えがあって受験するような子でも,一発目では主張がぼんやりしていることがほとんどです。「(1)私は将来,英語の能力を生かしてグローバルに活躍できる人物になりたい」とか,「(2)(経済学部などで)貴学での学びを活かして,ビジネスの世界で活躍したい」とか,「(3)多くの人との交流を通じて,幸福度の高い社会を実現したい」とか,いろいろあるでしょう。と,試しにこの段階でありがちな文言を挙げてみましたが,一見「それっぽい」ように見えるかもしれません。これらのどこが足りないのか。一つずつ確認してみましょう。

 

(1)英語がちょっと得意で「英語を使った仕事をしたい」という子がこんな文句を書いたりしがちです。けれど,「英語を使った仕事」って何でしょう(ちなみに私,英語は全くしゃべれませんが,英文の推薦書を頼まれたりすることもままあります。もちろん英語に翻訳していただくのはネイティヴの人にお願いしますが,そもそも質問項目なんかはこちらで理解しなければいけない。しかしこんな私の仕事を「英語を使った仕事」とは表現しないでしょう)?純粋に語学の分野なのか,ビジネス関係なのか,教育関係なのか,福祉や医療の分野なのか,受験生も案外その辺のイメージがあいまいだったりします。

 

(2)経済学部とか経営学部とか言ったところを志望する受験生に多いパターンなのですが,具体的にどのような学修をビジネスに生かしていくのか。マクロなのかミクロなのか,会計なのかマーケティングなのか組織論なのか,それぞれの学問分野でも様々な研究があるわけで,どんな「学び」が将来につながるのかを考えさせることが必要になります。

 

(3)意識の高い,立派な理想のように聞こえますが,実際にどんな形(方法論)でその理想を実現するのかが不明です。この内容で社会学部とかリベラルアーツとかを目指す格好だと,受験生も「大学で幅広く勉強する中で見つける」つもりだったりして,一般受験であればそれでもいいのですが,AO入試だと志望理由書の落としどころが見えなくなる心配があります。

 

・大学のPRポイントばかり書いてある

これも上記の「主張がない」に付随することが多いのですが,自分の「したいこと」と大学・学部の「強み」が合致するということだけに終始するパターンも散見されます。カリキュラム,施設,留学制度…etcがいかに自分にとって優れた環境であるのか,その点を強調すること自体は悪いことではないのですが,それ「だけ」ではいけません。そもそも入試というものは,「受験生が大学を選ぶ」側面と「大学が受験生を選ぶ」側面がマッチするかどうかの話です。とりわけAO入試においては「大学が受験生を選ぶ」うえで「他の受験生よりも卓越した特徴を持っている」ことを強く訴えなければいけないものです。実際最終稿の段階で,大学の環境に関する話題は,志望理由書の中でもほんの一部分を占めるにすぎません。

 

長くなってきました。いったんここまでとして,次回はここから出願に至るまでの流れについてまとめてみましょう。

 

では。