ゆでガエルはゆだりながら日記

ゆだりきったら左様なら。

ファミレスが「家族のレストラン」だった頃。

こんにちは。

 

皆さんはふだん,ファミレスって使いますか

行くとすれば,どんなつもりで行くでしょう。

私自身は,ここ数年,ほとんどファミレスに行く機会がありません。

というより,ファミレスで「食事する」機会がないと言ったほうが正確かもしれません。

こういっては業界の方に申し訳ないですが,なにか食事をしたいというときに,「手頃な価格でなんでもあるレストラン」に行きたいとはなかなか思わないのですね。

もちろんフルコースを出すような立派なお店のあれこれのお料理には憧れますし,(実際には行けないけれど)そういったお店で見たこともないようなお料理が次々に出てくるとすればきっと満足するのだろうとは思います。

 

けれど一方で,「ファミレス」となると,コーヒーを飲むプラスちょっと食事をするという感覚で,あんまり「わざわざ食事をしに行こう」とは思わないですし,個人的にはあんまり「気分がアガる」感じもしません。

 世の中全体がそういう傾向にあるのかもしれませんが,今の御時世これだけ色んなタイプの店屋ができると,ファミレスのように「なんでもある」お店の需要は,「これだけは自慢だ」と言える商品を持つような専門店に比べて殆どないのかもしれません。

 

けれど,私が子供の頃は,外食すること自体が特別なことでしたし,ファミレスだって今みたいにチープな(陳腐な?)感じのものではなかったように思うのです。

 

今回は,そんな私の思い出話にお付き合いいただければ幸いです。

 

私が子供だった頃,というのは今から30年以上前,下手すると40年近く前の話になりますが,自分自身にとって最初期の外食の記憶といえば,保育園で連れて行ってもらったマクドナルドです

今や,マックのハンバーガーに何も特別な感じも抱かなければ,むしろただのハンバーガーなど食いたくもないと思っていますが,何なんでしょうね,あのとき食べた初めてのハンバーガーは,やけに美味しかった記憶があります。

今でもあるのかわかりませんが,そのときは,店員さんがかぶっているような紙製の帽子をかぶって食事をしたように思います。かすかな記憶をたどると,保育園での年に一度の「お食事会」のようなものだったと思うのですが,その頃はマックで昼を食べることが「特別」だったんですね。

 

マックですらそんな「おごちそう」だったのですから,レストランでの食事などは当時の私にとっては贅沢の極み。その頃,ときどき祖父に連れて行かれたのは,一之江にあるファミリーレストランでした。当時祖父は一之江に工場を持っていたので,それでときどき連れて行ってもらったのでした。

このお店,デニーズやすかいらーくのようなチェーンのファミレスではなく,独立系のお店です。

もちろん高級メゾンというわけではまったくなく,家族連れを客層としたお店です。しかし,あくまで子供の頃の印象ですが,今どきのファミレスのような感じではなく,客席どうしも結構ゆったりとスペースが取られていたように思います。また,普通ファミレスと言うと,店内の照明も蛍光灯で思いっきり明るくしてありますが,ここは落ち着いて食事ができるような具合で,やや暗めに照明を落としてあります。

多分その頃私達が食べていたのは,グラタンとかハンバーグとか,そんなようなものだったと思います。大人たちはステーキなどを頼んでいたように思いますが,そこのステーキは(曖昧な記憶ですが)格子状に焼き目が入っていて,イメージの中にあるいわゆる「ステーキ」の感じだったのが印象に残っています。

食後,われわれ子どもたちはフルーツパフェ(だったか?)を食べるのが楽しみでした。ガラスのライオン型の器に,プリンやらフルーツやらが山のように乗っかっていて,今でもあの器があるとすれば多分ときめいてしまうでしょう(検索してもそれっぽい画像が出てこないところを見ると,もうどこも作ってはいないのでしょう)。

 

いまどき,ロイホにしてもデニーズにしても,ステーキも出せばとんかつも出すファミレスがほとんどですが,ここは洋食メニューしかなかったように思います。でも,むしろそれで良いのではないか。とんかつはとんかつ屋で食ったほうがうまいですし,これだけ回転寿司屋も多い中で何を好き好んでファミレスでネギトロ丼を食べなければならないのか。もちろんハンバーグだってパスタだって今ではレトルトでそれなりの質のものが家でも食べれる時代ですが,やはりちゃんとした洋食は店屋で食べたいもの。「レストランで食事をする」ことについて,このお店は過不足ない満足が得られるところ,とおとなになった今では表現するでしょう。

 

祖父が工場を閉めてからはここに行くことがなくなってしまったので,私自身も20年以上ここには行っていません。しかしこのお店今でも名前を変えて残っているのを数年前に弟が発見しました。流石に昔の様子そのまんまではないようですが,なんとなく当時の面影も残しています。弟は若干気難しい男で,家族で集まって食事をしようと言われても仕事だなんだと理由をつけて来ないことがほとんどなのですが,けれどここは気になるようで,まだ実現してはいないのですが,家族みんなでここで食事しようというような提案をしてくれています。ヤツにとっても,ここでの食事はなんだか幸せな記憶なんでしょう。

 

いまや,こういう幸せな記憶を残してくれるレストランというのは,どれだけあるのでしょう。その頃に比べれば,外で食事をするにしてもありとあらゆるお店が巷にあるわけですが,しかしその頃のように,外食に特別感が伴うようなことは,いまやなかなかないのかもしれません。今でこそなんてことのないファミレス,でもかつては文字通り「家族の」レストランだった時分があったのだと,私は思っています。