閉める店,なくなる味②
こんにちは。
世の中,フードジャーナリストだの,レストラン評論家だの,「食」に関わる記事を書いて世間の耳目を集めている方が色々いらっしゃいます。
羨ましいようにも思いますが,自分がその立場になるとしたら,ちょっと躊躇します。
昨日もテレビを見ていると,年間1000回以上外食するというぐるなびライター(多分本業は芸人)が出てきたりしましたが,それはそれで「いいモン食えていいなあ」とは思うものの,私は家で食事するのが一番落ち着きます。
あるいは週に何度も高そうなレストランへの訪問記をブログに乗せているライターさん,お金はどこから出ているのでしょうか?私にはそんなゼヱタクは年に数度できれば御の字です。
※ある「辛口グルメ評論家」はこんな事を言っています。
そんな小市民ですので,前回に引き続き,思い出の「フツーの昼飯」について綴ってみたいと思います。
②弁当屋・T(前回のとは別)
前回紹介した「T」とは全く別のお店ですが,場所は3件くらい隣のところでやはりお昼時には混み合っていたものでした。
こちらはよくある街のお弁当屋さんといった風情で,唐揚げ弁当を中心に,中華弁当やらハンバーグ弁当やらといったあれこれスタンダードなお弁当を出すお店でした。ものと数にもよりますが,注文してからせいぜい5分くらいで出来上がるので,よくタクシーの運転手さんが立ち寄っていたりします。おにぎりのたぐいもそれなりに種類が豊富で,天むす・山菜おこわ・きのこおこわなんて言う組み合わせで昼を済ますこともありました。
そんなわけで定番は唐揚げ弁当,それも多くの人がご飯を「海苔明太」にクラスアップします(常連はこれを「バージョン」という)。私も時々食べたりしたものですが,ここの唐揚げはもも肉ではなくムネ肉を使っているので,脂のクチャっと感よりもバッサリとした感じがメイン,それが苦手な私は食べるたびに「・・・」と思いながら噛み締めていたものでした,だったら食べなければいいのに。
むしろ私が気に入っていたのはのり弁です。のり弁なんて,今どきのコンビニであっても大した値段はしないものです。というのは,のり弁のモットーは「安さ」であって,仮に白身のフライの「白身」がメルルーサであったとしても,それなりに食えればいい,むしろちゃんと「海苔おかかごはん,白身フライ,ちくわ磯辺揚げ,きんぴら」の基本が揃っているかが問題です。
その点では,ここののり弁は十分合格点。また,のり弁が400円台になってはいけません(※個人の感想です)。たしかここは,多少の値上げがあっても350円を超えることはなかったように思います。
さらに私が必ずつけるのが,タルタルソース。プラス20円のこのゼヱタクが,何ということのない白身フライを「洋食」に化けさせます。タルタルとウスターのダブルソースが,おかずの面での肝です。
ご飯もいい。ここのご飯は固めです。家で食べるぶんにはご飯は柔らかめが好みですが,お弁当には硬めのご飯のほうがいい,というのは,どんなに職場から至近の弁当屋であっても,デスクにたどり着くまでには数分のディレイがあります,この時間で程よくむらされる感じがたまらんのです(こう自分で書いていて,なんとみみっちいことかとがっくりします)。
しかし何よりも肝心なのは,やはり白身フライが揚げたて,衣のサクッと感です。これはどんなにコンビニののり弁が進化しようが,真似のできない部分でありましょう。
いや,今どきコンビニの揚げ物コーナーも充実しているので,ベーシックなのり弁に白身フライをトッピングするというカスタマイズ作戦もできなくもないですが,しかしそれをやっちゃあおしめえよ。
うーん,のり弁,食べたいな。世の中にはのり弁に哲学を持つ御仁もあらせられるそうで。身近なものほど,案外奥深いということなんでしょうか。
続きます。