「僭主」って?②
こんにちは。
今回はいよいよ,「僭主」という言葉そのものとペイシストラトスの政治について綴ってみたいと思います。
2.「僭主」とは。
『用語集』などを見ると,「僭主」について
非合法な支配者。前7世紀以来,貧富の差の拡大に不満を持つ民衆の支持を得て,貴族の一人が独裁権を握った。
とあります。
これでもまあ,なんとなくわからなくもないですが,「僭主」という言葉に含まれるニュアンスは,もう少し複雑です。というのもこれ,英語では"tyrant"なんですね。これ,一般的には「暴君」と訳される言葉です。「独裁=悪」といった価値判断が紛れ込んでしまっていますね。
しかし,教科書レベルの記述でも,ペイシストラトスの治世について悪い記載はまず見られません。
ペイシストラトスは,権力奪取の方法だけを見ればルールを無視していたのかもしれませんが,実際のところは国内の対立軸をうまくにらみながら,貴族を牽制して中小平民の利益のために産業の育成(ラウレイオン銀山)などをやっていたりするわけで,今どきの感覚で言えば左翼社会主義なのか。
あるいは中小市民層の支持を集めるために経済の活性化を図るという点だけ見れば,トランプの手法にも通ずる部分があるのかもしれません。
独裁権力をふるいながら産業の育成を図った,これがペイシストラトスの政治であったわけで,言ってしまえば現代の政治を考える上でも参考になるかもしれません。
そういう意味では,「僭主」という訳語が適当なのかという指摘もあるようで。
ともかくも,この「僭主」という言葉,他では使うことはないかもしれませんが,ペイシストラトスの実績も含めて,ちょっと掘り下げて勉強してみたい興味深さがあるとは思いませんか。
今回はここまでです。
では。