ゆでガエルはゆだりながら日記

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「僭主」って?①

こんにちは。

 

今回は小難しい世界史用語の一つとして,「僭主」という言葉を取り上げてみたいと思います。

 

1.ペイシストラトスまで

多分この用語は,古代ギリシアアテネの民主政に向けてのプロセスに関する話の中で,「ペイシストラトスって何者?」という話題の中で出てくるものだと思います。

 

そこで,本題に入る前に,そもそもアテネの民主政という話題に出てくるあれこれの人々についての基礎知識を。「ドラコンの立法」とか「ソロンの改革」とか,「クレイステネスの改革」とか,この辺のあたりでぽちぽち人名が出てくるのですが,これらの人々が何者なのか,ご存知ですか。

 

基本的に,この人達は,貴族の出です。そして,貨幣経済の浸透とともに貴族・平民の中でも格差が生じていく中で起こった身分闘争(貴族と平民の対立)において,両者の調停を図った人々,というような理解でだいたいはいいのかなと思います。

 

この,貴族と平民の対立,というのを頭においてください。

前7世紀,地中海世界に鋳造貨幣なるものが登場すると,貨幣経済(お金を通じてものを売り買いする)ということが広まっていきます。

貨幣の特徴の一つに,「貯められる」というものがありますが,まさにこの特性のもと,貨幣を蓄えるものと蓄えられないものが現れてきます。

その結果,それまで血筋で分けられていた,貴族と平民という社会の構造にも変化が現れ,乱暴な言い方をすれば「貧乏貴族」もあれば「金持ち平民」も登場してきます。

そうなると,これまで戦争があった際に自らの財力をもって戦ってきた貴族の中にもままならなくなるものもあり,次第に経済的に裕福な平民にも戦争への協力を求めるようになる,するとこうした「金持ち平民」が発言力を持つようになり,ポリスの運営を貴族だけで独占することに対して平民の側から不満も生じてきたわけです。

こうした対立を調停したのが,ドラコンだのソロンだのであったわけです。

 

さて,こうした身分対立は,その時々の調停者によって一旦は収まるものの,やはり断続的に平民の不満は高まり,緊張が高まっていきます。

 

ソロンの改革によって財産額(納税額)により,平民身分にも一定の権利が認められはしたものの,それでも貴族・平民間のしこりが残っている中で現れるのが,ペイシストラトスなのでした。

 

続きます。