第1回共通テスト・世界史Bについて
先日,センター試験に代わる「大学入学共通テスト」の第1回が実施されました。
コロナ禍のもとで「強行」された試験となり,一部会場では悪天候のために2日めの試験ができないなどトラブルもあったようですが,流石に1回目,しかもコロナの問題はある程度織り込み済みということだったのか,大過なく2日間の試験が実施されたようです。
翌日の新聞に試験問題と模範解答が載るのもいつもどおりであり,私も朝からコンビニに行って新聞を買いに行ってきました(つまり普段は新聞をとっていない…)。
そんなこんなで早速世界史Bの問題を見てみました。ここではひとまずざっと眺めてみて思ったことをまとめてみようと思います。
①めんどい
どこでも言われていることかと思いますが,社会科に関しては,今回の共通テストはとってもめんどくさい,というか解答に時間がかかるものだと思います。思考力を問う,というお題目は理解できるのですが,実際には読解力が求められる試験であるように思われました。
シンプルに申せば,昨年までのセンター試験では極端な話,「リード文を読まなくても解答できる」問題がほとんどであったのに対して,今回は「リード文を読んでも(用語の知識だけでは)判断しづらい」ものがちょいちょいあったように思います。
②資料が難しい
そんなわけでこれまではたいして読み込みを必要としなかった資料文に関しても,割ときっちり読まなければいけないわけですが,この資料文の中で案外見慣れない言葉遣いに出会うことがままあったりします。
例えば…
第3問・問8「禄(ろく)を食み・・・」
こんな言葉,並の高校生が知っている言葉なのでしょうか
同じく問8「左前の服を脱ぎたい」
(男子で)柔剣道などをやっていればわかることなのかもしれませんが,服の右前とか左前とか,これとて言われてから初めて気づくことのように思います。
ほかに…
・ジョージ=オーウェル『1984年』がネタとして採用されていますが,この小説がどんな内容なのかを知っている人には有利な問題がある…高校生は読まないか(悲)
・第1問の問4,第4問の問7など,知識以上に読解力がものをいう問題はこれまでの世界史受験をしてきた人にはなれないタイプ。いわゆる「世界史バカ」には厳しい問題ではないでしょうか(良問だとは思いますが)。
一般的な解説は各予備校とかから発表されると思うので,詳しくはそちらをご覧くださいなのですが,多少心構えができていたとしてもなかなか戸惑いがちな,共通テストの初回でございました。
「御大」とは素晴らしいご身分
こんにちは。
以前,世のグルメ評論の有り様について痛くもない噛みつき方をしたことがありましたが,ここでも取り上げたマスヒロさん,しぶとく頑張っていらっしゃるようです。
そもそもグルメ評論ってこのご時世でむつかしいと思うのですが,「御大」のレベルとなるとコロナ再拡大が警戒されていた12月でもカニを食べに「Go To」されるようです。うらやましい。
しかし私もそこまでグルメ評論関係の紙媒体やネットを熱心に朝っているわけではなく,あくまで暇つぶしの範囲。
年末年始も(いつもより短い)休みの中で,なんとなくyoutubeの動画を見ていたりしたのですが,そうしたら。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。渋谷あたりの鮨屋の人が,あちこち食べ歩きをしている動画(あえてリンクは貼りません)。
私自身,時間もお金もないのでせめておいしそうなものが並ぶ動画を見ることで辛抱しているのですが,この方の動画を見ていたら,最近ちらほらとマスヒロさんがいるんですね。
動画を見る人に対する箔付けなのかどうか知りませんが,肉やらなんやらの料理についてうんちくを挟みながら,マスヒロさんがお食事をされています。
それだけだったら別にいいのですが,ある時,その動画を見ていたら,なんとマスヒロさん,こんなことを(いまだに)おっしゃっているではないですか。
「宗教上の理由から,おいしくないものは食べられません。」
まだこんなことをおっしゃっているんですね。10年以上前からの「定番ネタ」なのでしょうか。
聞いているこっちが恥ずかしくなります…。
ちなみにこの動画では,サイト主の方はすいすいお酒を召し上がっているのですが,マスヒロさんは召し上がっているようには思われません。
ある辛口グルメ評論家がおっしゃっていたように,やはりマスヒロさんは下戸なのでしょうか(その割にはワインに詳しいことになっているようですが…)
そして気になるのが,この時のお代。動画主様とは割り勘されているのか,あるいはマスヒロさんが「経費で落としている」のか,はたまた・・・。
そのあたりは突っ込んでも仕方ないので,本日はこの辺でお開きとさせていただきます。
新型コロナとステーキ屋
ご無沙汰しております。今年もよろしくお願いします。
すっかり更新に間が空いてしまいました。
9月から10月にかけて,気がつけば以前投稿した「推薦文の書き方」がなぜかご好評を頂いて,google検索等でもこのブログがトップに来るなど,予想もしていなかったことが起こりました。
見ていただいた方,ありがとうございます。
さて今回は,久々のアップということもありまして,私の日常からの思いつくままを並べてみようと思います。
先日,両親から呼び出されて(孫=ウチの娘にくれてやりたいものを渡したい),実家に向かったのですが,せっかくだから飯を食おうということで,昔から世話になっているステーキ屋に行ったのです。
ここなんですが,地元では割に知られていて,私も若い頃は1kgの肉だけで腹一杯になるチャレンジということもやってみたことがありました。
ちなみにその時のお肉は比較的リーズナブルなものであったのですが,もちろんそれでも旨い,ヘタにサシが入ったものよりも,むしろこの歳になってあの肉に回帰してみたいと思うような赤身の肉です。「ステーキは顎で喰う」という人もいますが,まさにそれを地で行くようなお肉でありました(けれど,ハラミだったのかな,あれ)。
今はこういうご時世なので,入り口で手指消毒をし,検温までしてテーブルに案内されます。で,いつものようにおしぼりが出てきたのですが,このおしぼりもこれまでのものとは違って,次亜塩素酸か何かで殺菌されたものという触れ込み。飲食店は衛生管理が命でありますが,ここまで徹底されれば納得です。
そんなこんなを経てメニューを眺めながら注文を考えたのですが,なんとなく「?」という感覚がその時浮かんできました。特段何かが変わっているわけではないのですが,何かが違うような気がするのです。
食事を終えて,改めてメニューを見てみて,その答えに気が付きました。ビミョーに(20gくらい)肉のサイズが小さくなっているのです。実際食べてみてそこまで極端な違いは感じませんでしたが,よく見ると,例えばこれまで180gで提供されていたものが160gになっているのですね。
衛生対策でコストがかかるのもわかりますし,客一人がたくさん食べるのは良いにしても長居されたくはない。サクッと食べてサクッと出る,これがコロナ時代の外食何でしょうね(ちなみにかつては親父と一緒にだらだら飲み続けて3時間近く使っていた)。そんなところからの苦肉の策(肉はうまいですよ)だったのでしょうか。
コロナの時代,様々な当たり前が変わってきていますが,変化はこんなところにも来ていたのでした。
では。
ずいぶん前の記事なのに。
こんにちは。
なんだか今年の夏は忙しなくて、やっとお盆を迎えた、という気分です。
それにしても、ここしばらくまともに記事を更新していないのですが、閲覧数だけは増えているこのブログ。
なぜか。
以前上げた「推薦文の書き方」をご覧になってる方が多いようです。
そういう時期ですものね。推薦文を依頼されている方々、お疲れ様です。
拙文がお役に立っていれば幸いです。
ひとまず。
こんにちは。
今回は,特段何を書こうというわけではないのですが,一応生きているということで投稿いたします。
それにしても,毎日のように(決まった記事だけ)閲覧があるというのは,驚きですね。
近々,次の投稿をアップいたします。
さぎりゅう
大学受験・志望理由書の「書かせ方」(実践編)①
こんにちは。
巣ごもり生活もすっかり普通のこととなり,IT的なものには全く疎い私もオンラインで仕事するようなことが当たり前になっている今日このごろです。
もっとも,年度替わりであったことも加わってなれないことが重なり,しばらく更新することができませんでした。
そんな中で今週は"stay home"でありますので,この機会に。
さて前回,AO受験などにおける志望理由書の書かせ方について,まずは準備編のようなものをまとめてみました。
今回は,実際に出願するまでの文章作成についてまとめてみようと思います。
では,私の場合の手順にしたがって,やりようをご紹介します
※いつものことですが,あくまで私の場合のやり方です。これが絶対的に正しいとも思っておりませんし,相手(受験生)によってもアプローチが変わることもあります。
0.受験の予定を把握する
きちんと相手するにあたって,誰がいつごろ出願なのかを把握する必要があります。これには2つ理由があります。
1つはわれわれサイドに関すること。場合によっては何人も同時並行で相手をしなければならないこともあり,その際にはそれぞれの受験生の進捗状況に応じて一人一人にかける時間や優先順位を変えることもあります。また,少なくとも1カ月前には文章作成に取り掛かりたいもの。締め切り2週間前くらいに突然やってくる受験生に関しては,ことによっては断らざるを得ないかもしれません。そんなときも,「今は誰々が〇にちまで,誰々が×日までの出願で,いまは追加で取り組む余裕がないから他をあたってくれ」といった理由が言えれば,まだ相手も納得できるかもしれません
2つ目は,受験生サイドに関するものです。今述べたような突然の出願というのは,塾や保護者が受験を勧めた場合があり,その際には受験生本人の志望理由が弱いだけでなく,そもそも本人が出願の締め切りすらわかっていないことが経験上よくあったからです。
なお,ここで一つ出願の締め切りに関して大切なことを。ふつう,出願期間というのは「〇月〇日から×月×日まで」という風に,1週間から10日程度の日数が設けられます。その際,焦る受験生(というか保護者)は「出願初日(〇月〇日)に提出したい」と(強く)言ってくる場合があります。しかし,初日に出願しようが,最終日に出願しようが,きちんと形式を整えて出願していれば受験は認められるものですし,早く出願したからと言って合格しやすいわけではありません。したがって,締切日がいつなのか,および「消印有効」なのか「必着」なのかまでを確認させる必要があります。
1.まずは書かせてみる
前回,指導にあたっては面談を繰り返すことが大切だということを書きました。とはいえよほどしっかりした受験生でもない限り,この段階で志望理由が明確な受験生はそう多くはありません。
そこで,まずはいったん下書きとして志望理由を書かせてみます。
ちなみに,形式や分量(文字数)についてすでにある程度分かっている場合には,それに従って書かせるほうがベターですが,場合によってはこの段階では特に指定しなくても構いません。しいて言えば,分量については本来要求される分量の1.5~2倍くらい書かせるようにすると,この後のブラッシュアップがよりうまくいくように思います。
2.面談とブラッシュアップ
①現状の確認
さてここからが指導のキモです。とりあえず書かせてみたドラフト(下書き)ですが,どんなものだったでしょうか。
この段階で出てくる文章ですが,(あくまで経験上)こんな感じになっていることが多いように思います。
・主張がない,またはあいまい=重要なのは具体性
そもそも「大学に合格する(別に○○大学に実はこだわっていない)」ことが目的でAO受験を考える子は,志望理由がないことが多かったりします。この場合はそもそもなぜこの形式で受験するのか,必要によっては保護者とも話をしたほうがいいかもしれません(しかし,そうはいっても推薦で受験したいという気持ちは打ち消しがたいので,その際は厳しく指導することを保護者・受験生双方に納得させる必要があります(※))。
※こういった場合,そもそも受験生自体に将来像なりアイディアなりがないわけですから,時には厳しく指導することを通じて本人に真剣に考えさせるようなこともあります(本人の根っこに甘えがある場合も多いので,時には突き放したりすることもあります)。そのときに保護者から「指導をしてくれない」といったクレームが入らないようにするための対応です。
一方で,ある程度考えがあって受験するような子でも,一発目では主張がぼんやりしていることがほとんどです。「(1)私は将来,英語の能力を生かしてグローバルに活躍できる人物になりたい」とか,「(2)(経済学部などで)貴学での学びを活かして,ビジネスの世界で活躍したい」とか,「(3)多くの人との交流を通じて,幸福度の高い社会を実現したい」とか,いろいろあるでしょう。と,試しにこの段階でありがちな文言を挙げてみましたが,一見「それっぽい」ように見えるかもしれません。これらのどこが足りないのか。一つずつ確認してみましょう。
(1)英語がちょっと得意で「英語を使った仕事をしたい」という子がこんな文句を書いたりしがちです。けれど,「英語を使った仕事」って何でしょう(ちなみに私,英語は全くしゃべれませんが,英文の推薦書を頼まれたりすることもままあります。もちろん英語に翻訳していただくのはネイティヴの人にお願いしますが,そもそも質問項目なんかはこちらで理解しなければいけない。しかしこんな私の仕事を「英語を使った仕事」とは表現しないでしょう)?純粋に語学の分野なのか,ビジネス関係なのか,教育関係なのか,福祉や医療の分野なのか,受験生も案外その辺のイメージがあいまいだったりします。
(2)経済学部とか経営学部とか言ったところを志望する受験生に多いパターンなのですが,具体的にどのような学修をビジネスに生かしていくのか。マクロなのかミクロなのか,会計なのかマーケティングなのか組織論なのか,それぞれの学問分野でも様々な研究があるわけで,どんな「学び」が将来につながるのかを考えさせることが必要になります。
(3)意識の高い,立派な理想のように聞こえますが,実際にどんな形(方法論)でその理想を実現するのかが不明です。この内容で社会学部とかリベラルアーツとかを目指す格好だと,受験生も「大学で幅広く勉強する中で見つける」つもりだったりして,一般受験であればそれでもいいのですが,AO入試だと志望理由書の落としどころが見えなくなる心配があります。
・大学のPRポイントばかり書いてある
これも上記の「主張がない」に付随することが多いのですが,自分の「したいこと」と大学・学部の「強み」が合致するということだけに終始するパターンも散見されます。カリキュラム,施設,留学制度…etcがいかに自分にとって優れた環境であるのか,その点を強調すること自体は悪いことではないのですが,それ「だけ」ではいけません。そもそも入試というものは,「受験生が大学を選ぶ」側面と「大学が受験生を選ぶ」側面がマッチするかどうかの話です。とりわけAO入試においては「大学が受験生を選ぶ」うえで「他の受験生よりも卓越した特徴を持っている」ことを強く訴えなければいけないものです。実際最終稿の段階で,大学の環境に関する話題は,志望理由書の中でもほんの一部分を占めるにすぎません。
長くなってきました。いったんここまでとして,次回はここから出願に至るまでの流れについてまとめてみましょう。
では。
大学受験・志望理由書の「書かせ方」・準備編
こんにちは。
東京では桜が七分咲きくらいになってきて,なかなかいい感じです。
とはいえ春は別れの季節でもあって,昨日も隣席の人から「お世話になりました。今日が最後の出勤です」との挨拶があって,なんだか複雑な気分です。
さて,以前大学受験に向けての推薦文の書き方について個人的な考えを載せましたが,今回は,また今年も始まっていくAO・公募制推薦入試(面倒なので,以降単に「AO入試」とだけします)で子どもたちが提出する志望理由書の書かせ方について書いてみたいと思います。
※当初は志望理由書だけを想定していましたが,自己推薦書にも通じる部分があろうかと思います。
なお,私は国語の先生でも論文指導の専門家でもありません。また私は,主に「文系」の学部について経験を持っているだけなので,理系のAOはここでは扱いません。ここではただ,自分のつたない経験の中で我流で学んできたことをまとめるだけなので,ご利用は自己責任で。
いわゆるAO入試なるもの,この20年くらいでいろんな大学・学部が採用しています。また,ここ数年の大学入試改革でも「主体性・思考力・表現力・(単なる知識の詰込みではない)生きた知識や技能」といったものが求められるとされていることから,AO入試がこのような能力を生かした入試形態として注目されているのも事実です。
さりとて,大学受験というもの,そんなきれいごとだけで片付けられるものでもありません。AO入試について,子どもたちの中には(いや,保護者にも)こんな風に考えていることがあります。
・いわゆる受験勉強をしなくても,大学に合格できる
・早く受験生活が終わって安心できる(だからそのあとバイトしたり,免許取ったり,セイシュンできちゃうかも?)
そして,いったん子どもたちがAO受験に本腰を入れてしまうと,明らかに普段のお勉強から逃げていく(しかも,「自分の受験の準備」という大義名分まである)ので,高校の先生方も,あんまりAO入試という形式を好ましく思っていなかったりするんじゃないでしょうか。大学受験における「裏技」な感じがするというか。
ただ,これまでぼちぼちとAO対策にかかわってきて,私自身,すこーしだけ考えが前向きな方向に変わってきました。どう変わったのかについては,後程。
では,ここからが本題です。
AO入試とはどういう入試なのか,についてはいろんなところでいろんなことが言われているのでここでは割愛します。
じゃあどんな子がAO入試を受けるのか,大まかに分けて,次の3タイプになろうかと思います。
パターン①
:特徴的な活動実績や,特定の分野に対して強い関心をもって継続的に取り組みを続けてきた子
パターン②
:勉強はいまいち,だから一般受験が不安,AOだったら受かるかも!?と思っちゃったり,またはそう思った保護者から勧められたり,何としても実績を挙げたい塾(※)から勧められたりした子
※某W塾なんかがよくやってくれます。簡単に慶應SFCとかを勧めてくれちゃうのですが,あの2000字近く要求される「評価書」を書くのはこっちなんだよ!
パターン③
:高校生活は部活一本,という運動部の子。監督や顧問のコネで特定の大学進学の道があり,でも一応試験は受けてもらわなければいけないので,AOの形で受験することになっている
面倒を見る側としてみればパターン①だといいのですが,私のいる環境では,ほとんどが②か③のパターン。最近はAO指導専門の塾も増え,そっちが面倒見てくれればいいのですが,実際の過去の経験として,「モノにならない」と思われた子に対して指導の手を抜くこともあったり(※)で,そんな場合我々のところに来ることになります。
※明らかに文章の量や質が足りないのに「塾の先生からこれでいいと言われた」ということがありました。たぶん力のあるほかの子に,指導員のリソースを回したのでしょう。大学生が指導するタイプのAO専門の塾のことでした。
で,パターン③の子については,まああんまり手を加えなくても「それっぽい」文章に仕立ててあげればいいのでそんなに手間はかからないのですが,パターン②の子は考えの根っこのところにどこか「ラクしたい」という気持ちがあるので,厄介なことになったりします。
そこで,②のタイプを(せめて意識の面だけでも)①のレベルに持っていくこと,①の子に関してはさらに自分の興味関心について深掘りさせること,ここが準備段階での肝になります。
私の場合,そのためには何度でも,じっくり時間をかけて話し合いをします。どんなことを話すのか。ざっと挙げてみると・・・
0.志望理由(何をしたいのか,ぎりぎりまで具体的に)
1.そう思うようになったきっかけ
2.(主に高校生活における)実績,資格
3.あなたを入学させることによって,大学側が得るメリット(そもそも「学力」の高い生徒は一般入試でほっておいても入ってくる,じゃあなぜAOでその受験生を取らなければならないのか)
4.なぜその大学でなければならないのか(ほかの大学でも学べることであれば,わざわざそこの大学にこだわる必要もない=大学側も,その受験生にこだわる必要はない。ひょっとして,大学のブランドで選んだりしてないですか?)
5.大学での学修計画(「そもそも,うちの大学の特徴ってわかってますよね?」)
6.大学で学んだことをどう社会で生かしていくのか(単に自分の強い思いを訴えて,「私の夢なんです」と力んだところで,大学にしてみればただの独りよがりにしか聞こえないかも)
まだまだあるかもしれませんが,ともかく細かいところまでとことん聞き出します。甘い考えで受験するような子だと,特に項目3~6で詰まります。下手すると逆ギレめいてきたりもする(「もーいいです。ほかの先生に頼みます。ふーんだ」)のですが,ここは日和ってはいけないところだと思っています。というのも,この先やってくるであろう面接の際,この手のことを聞かれて答えに窮してしまうと,それまでの準備が水の泡になるからです。
もちろん,これらの質問に対してイッパツですらすら答えられるような人はいません(いたとしたら,むしろアレな感じの人かも,と思ってしまいます)。だから,じっくり時間をかけて,何度でも問いを繰り返して,子ども自身に自分の考えや将来像を明確に意識させるのです。1~2時間で終わるようなものではありません。
ちなみに,この「準備」をいつから始めるのか。私は,高2の3学期から高3の1学期にかけて,早ければ早いほうがいいと思っています。もちろん,時間の経過とともに子どもたちの考えが変わることもあろうかと思いますが,子ども自身が考えに考え抜いて別の方向に進むのであれば,前向きな方針変更といえましょう。間違っても保護者や塾の都合で受験校が変わるようなことがあってはいけない,と思っています。また,この手の問い自体は根本的なものであるため,この後実際に文章を書く段階になっても,同じような問いかけを繰り返すことがあるでしょう。その際も,子どもたち自身の「芯」がしっかりしていれば,壁を乗り越える策が出てくるはずです。反対に,この作業をおろそかにすれば,後になって子ども自身が苦しむことになります。だから,嫌われようがめんどくさがられようが,この面談を徹底しなければならないのです。
ちょっとマジメに語ってしまいましたが,しかしそんなレベルですらない子だってたくさんいます。例えばパターン③の子の場合,「あまり手間はかからない」としましたが,試しに面接練習をしてみると,こっちが卒倒しそうな「しぼーりゆー」に出会うこともたびたびあります。
一例を挙げましょう(なお,この話題は過去に面倒を見た複数の子をモデルにして作ったフィクションです)。
高校時代,野球部に所属し,ほぼほぼ部活に命をささげた子。経済系の単科大学への進学を考えて,受験することにしました。で,面接練習を頼まれたわけですが,
私「志望理由は?」
子「自分は3年間野球部で頑張ってきたのですが,御校の野球部は実績があり,私も大学生活で野球を続けたいと思っています。卒業後は,企業に就職したいと思っているので,ビジネスも勉強したほうがいいと思って,御校を受験しました!」
・・・あのねえ,大学は野球することがメインではないんだよ。それに「経済学部」への志望理由は,「野球のついで」で,それも「就職するため」なの?
また,これとは別に,「将来,家業を継ぐために経営系の学部を受験する」という場合もあったりします。この場合,志望理由のきっかけ自体は自分自身の経験でもなんでもありませんが,ただ「家業や家庭環境」に関係した志望理由は,十分アリだと思います。というのも,それ自体が「ほかの子にはない経験」であるからです。
あと,項目2の「実績・資格」ですが,PRポイントとしてアピールするのであれば,客観的に見て平均的な高校生よりも抜きんでているようなものでなければなりません。特に,一部の大学・学部の推薦入試は,「スーパー高校生」とでも呼べるレベルでなければ受からないものがあります。具体的には,早稲田の教育(社学も)の自己推薦入試です。ときどき私の周りでも受けたいという子がいたりするのですが,まったくもってお勧めしません。というのも,早稲田・教育の自己推薦,どれくらいのレベルの実績が要求されるのかというと,「全国ロードショー映画『鉄道員』に出演したことで受賞した日本アカデミー賞新人賞」とかです。広末涼子という人がこれで合格したんですが(しかも中退した)。たいていは,インターハイで全国〇位とか,数学オリンピックで結果を出したとか,そういうレベルでしょう。
一方で,「出願に必要な要件」として特定の資格が設けられていることもままあります。IELTSオーバーオール6.0とか,英検準1級とか,語学系の資格がほとんどです。
これとは別に,別に誰が要求しているわけでもないけれど,私としては何とか持っていてほしい資格,それは「漢検」です。文章を書くにあたって,漢字は身につけておきたい。実際に手書きでないとしても,漢字の素養のあるなしでは思考の深まり方に大きく違いが出ます。最低でも3級,できれば2級を持っていてほしいと思います(※)。
※例えば,こんなことがありました。出願前の最終段階では,「文章の文字数を削る」という作業に四苦八苦することがままあります。「あと40字削りたい」で悩んでいる生徒の文章を試しに見せてもらったとき,私はこれを「換骨奪胎」という表現で置き換え可能だと思って,そう伝えたところ,たいそう驚かれてしまいました。しかもその子,英検準1級も持っていれば,学校の成績もトップクラスの優秀な子なのです。
さて,ここまでいろいろ述べてきましたが,基本的にAO入試の指導は,窓口を一つにさせるようにしています。塾に頼るのならそれでもいい,こっちに依頼するのであれば,こっち一本にしてくれ,ということです。というのも,今後指導が進んでいく中で,ある人はAといい,別の人は真逆のBと主張することもよくあるからです。こうなると,指導の受け手(子ども自身)がさらに迷って混乱,メンタルが崩壊なんてことも心配されるのですね。だから,他の人の指導を受けている子が私のところに来て意見を仰いだとしても,「あくまで私の考えは参考意見だ,あとはあなたを指導している先生と相談なさい」と言っています。
そろそろおしまいにしましょう。
最後に,冒頭でふれたように,私が「裏技」であるAO入試の指導になぜ付き合うのか,私なりの考えです。世間でも言われるように,AOで合格したような大学生は,キツイ経験をしていない分,弱い,就職活動でつぶれる,とか,そもそも「お勉強」をしていないがゆえに一般入試で入った学生より劣る,とか,否定的な側面があることは私もよくわかっているつもりです。そしてAO入試に付き合うにしても,もちろん「合格」は手段であって目的ではないため,「受からせるために指導する」などという下世話なレベルでは指導し(たくあり)ません。大学というところは自分自身の「学び」を広げ,深めていくところであり,だから合格後の指導こそが大切だと思っています(ただ,たいていの生徒は「長い春休み」を満喫して埋没するのですが)。
・・・と,このように書くと,「やっぱり本心ではAOなんてやらせたくないんじゃないか」と思われるかもしれません。確かにそんな気持ちもあります。しかし,こっちの指導に本気で付き合ってくれた子の中には,少しは私の思いをくみ取ってくれるのもあったりするんですね。ある卒業生,大学2年くらいの時に顔を合わせることがあって,「最近どうだ」みたいな会話をしていたら,「入学前に自分のやりたいことをしっかり考えることができたから,大学生活も充実している」なんてことを言いだして,おじさん,泣きそうになってしまいました。AO受験の時は,何度も志望理由書にダメ出しして,さんざん泣かせた子なのですが(おれ,悪い奴だな),こっちも必死になって付き合った甲斐があったというものです。そしてその子,幼児教育関係の勉強をしているのですが,こっちはそんな世界はもともとシロート,でも相手に付き合っていく中でこっちにとっても勉強になったのですね。
だからやめられない,というところなのです。
こんな話が,どなたかのお役に立てれば幸いです。
お付き合いいただき,ありがとうございました。
次回は,書かせる段階に進もうと思います。
では。