ゆでガエルはゆだりながら日記

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推薦文の書き方(大学受験用)

こんにちは。

 

暑い暑いが口癖になりがちな今日この頃ですが,こないだとあるミーティングに出席した際,その会場の冷房が恐ろしく涼しくて,具合が悪くなってしまいました。おじさんの私もご多分に漏れず大変な暑がりなので,冷房は東南アジアのデパート並みに効いているほうがありがたいのですが,そんな私でも肩から首筋がガッチガチにこわばってしまうくらいの効き目。女性だったらもっと大変なことになっていたんじゃないかと思います。

 

さてそれはそれとして,今日は大学受験向けの推薦文の書き方について簡単にまとめてみようと思います。早いところではもうこの時期から出願が始まる大学がありますよね,このところ推薦文書きを頼まれた同僚・後輩からどう書いたらいいのか相談を受けることがあったので,ここに自分の経験をまとめます。ただ,もしこれがほかの方の役にも立つのであれば幸いと思う次第です。

※というわけで,ご利用は自己責任で

 

巷には受験生向けの「論文の書き方」本はいくらでもあるのですが,その周りにいる大人向けの「推薦文の書き方」は意外と多くなくて,大人(それも教員)なのだからそれくらい書けるだろう,ということなのでしょうか。けれど,誰だって「初めての経験」はあるわけで,そういった方々の参考になれば幸いです。

 

(※)なお,いちおうタイトルでは「大学」としていますが,専門学校その他でも同様の書き方で問題ないと思います。また,大学・学部によって求められる字数は異なりますが,ここではひとまず400~600字前後の文章を作る前提で進めていきます(1000字を超える文章を要求する大学もありますが,その際は一つ一つのポイントを綿密に詰めてみてください)。分量については,また後段で説明します。

 

0.準備の前の準備

まずいきなり重要なポイントです。日ごろから受験生の指導に当たられているようであれば,生徒(できれば保護者にも)には「推薦書の作成には時間がかかる」ものだということを説明しておくに越したことはありません。どんなに仕事熱心な先生だって,朝頼んで夕方すっきりみたいなクリーニング屋的な流れで推薦文が書けるはずはありません。むしろ熱心な先生ほど,どんな文章を書いてあげるか悩むものですし,しかるべき上司によるチェック,さらには事務的な手続きとして公印が必要な場合がほとんどでしょうから,早ければ1カ月前,遅くても2週間前には推薦文作成の依頼をするよう伝えておいたほうが良いと思います。夏休み,とりわけお盆を挟む場合は注意しなければならないところです。

(※)場合によっては,留学を経験した受験生の場合など,海外の学校の先生にも推薦書を依頼する場合があるかもしれません。その場合,海外の先生は夏休みには間違いなく学校に出てこないので,5月くらいから先方にアポイントを取っておく必要があります。

当然ながら書く側にしたって推薦文作成以外のお仕事は山のようにあるはずです。その時間を縫って文章を練るわけですから,仕事の算段をつけなければなりません(面談や講習,会議や出張など,自分の都合だけでは動かせないスケジュールだってたくさんありますよね)。

そんなわけで事前に面談や説明会などで早めの申請ということを念押ししておきましょう。

「今日(明日)出願だから今欲しい!!」と言われても・・・ねえ(よくある話)。

 

1.準備=ネタ集め

推薦文を頼まれるくらいですから,書く人はその受験生と比較的近しい関係にあると思います。とはいえ,相手からただ単に「書いてください」と言われてそのまま書けるものではない,というか,それで書けるのならたぶんこの文章は見ていないはずです。

 推薦文には,生徒の様々な長所をなるべくたくさん,詳しく書いてあげたい。そのためにも,推薦文作成を依頼されたら,一度その相手と面談してみることをお勧めします(直接会えないにしても,何らかの形で個別にコンタクトをとることをお勧めします)。その際,推薦してもらいたいポイント(自己PR)を,箇条書きでも構わないので,紙ないしはメール等で事前に送ってもらうようにすると,話が早くなります。

 

 その理由は次の2点です。

 ①受験生本人の志望理由・自己PRポイントの明確化

→推薦入試の場合,書類選考ののちに面接があることが多くあります。その際に受験生本人がしっかり答えられるようにするためです。このことは特に公募制推薦など,必ずしも受かるわけではない推薦試験の時に重要で,大学・学部の特徴だけでなく,アドミッションポリシーや入学後の学習計画,卒業後の進路の方向性などをきちんと受験生が検討しているか,面談で確認することができます。

 

受験生の志望理由とこちらの推薦文のすり合わせ

→本人の志望理由書の内容とこちら側の推薦文の内容が合致している必要はありません。むしろこっちはこっちの立場として推薦文を作成するので文言が異なるのが当たり前です。ですが,受験生の志望理由とこちら側の推薦文でポイントがあまりにもずれていると,受け取る側(大学)も困るでしょう。そんなわけで,受験生の志望をよく汲んで推薦文を書くために,きちんと意思疎通しておいたほうがいいのです。

 

と,ここまでやってみて,じゃあ書いてみようかとなるわけですが,じっさい推薦文を書き始めてみると,「ここはどうだったのかな…」などと細かい部分で不明なところも出てくると思います。そんな場合に備えて,コンスタントに受験生と連絡が取れるようにしておくと,何かと役に立ちます。

 

2.書く(基本編)

①分量(文字数)

どれくらいの字数を書けばいいのかは,相手の大学によって書式がまるっきり異なります。たいていは用紙の一定部分に枠がある,親切なところだと罫線が引いてある,といった感じです。したがって,明確に何文字書けばよいのかという決まりはありません。まずは用紙をコピーして,大方の字数をカウントしてみます。

 

その際に(そのうえで),「何割くらい書けばいいのか」という疑問も浮かぶかもしれません。これもはっきりと決まりがあるわけではないと思いますが,私の場合はなるべく枠いっぱいにみっちりと書きます。大学側の受け取り方として,スカスカであるよりもみっちり書いてあったほうが,受験生がちゃんとまわりからの推薦に足る人物であると感じるであろうという思いからです。そこが合否に関係しているかはわかりませんが。

 

また,最近は推薦文の書式を大学のサイトからダウンロードできるところも増えてきました。その際はワープロ可ということもあります。大変ありがたいことですね。字のうまい下手も,書き損じも気にしなくていい,余談ですが,かつてある大学に出願が集中した際,こちらも推薦書を何通も自筆で書かざるを得なくなり,軽く腱鞘炎になったことがあります(そんなに何年も前のことではありません)…。

もちろん,書式が願書の冊子についているもの1枚,つまり一発勝負の書類になっている大学もまだあります。ひとまず,こちら側でも大学のサイトくらいは確認しておきたいところです。

 

②構成

 これも決まった形式があるわけではありませんが,私の場合はだいたい,こんな感じで書きます。

 

・(はじめ=冒頭)受験生の特徴を,一言で示す。

ex)志願者は,着実な努力を積み重ねる姿勢を持つ一方,常に旺盛なチャレンジ精神をもって活動の場を広げてきた人物である。

・(なか=根拠)学業成績,活動実績などを詳しく書く。

→詳しくは後述しますが,私の場合は時系列で書くことが多いです。つまり「1年次は~,2年次は~」といった具合です。

これとは別に,活動の側面ごとにまとめる場合もあるでしょう(「学業面では~,生活面では~」。

どちらでもいいと思うのですが,ある程度長めの文章であれば時系列,短い(2~3行とか)であれば側面ごと,という書きようになるかと思います。 

 ・(おわり=結論)その大学で学ぶにふさわしい人物であることを示す。

ex1)志願者は貴学における幅広い学びを通じて,多様化する現代社会において○○として活躍する人物であることを確信する。以上から志願者を貴学に推薦する次第である。

ex)2志願者は,高校での活動を踏まえ,国際色豊かな貴学において,理論と実践の両面から学ぶことを熱望している。以上から志願者を貴学に推薦する。

 ※一般的にはex1のような形でよいと思うのですが,特色ある大学に特色ある受験生を送り込む場合には,そのマッチングを強調してex2のように書く場合もあります。

 

③言葉遣い

・常体か敬体か

「だ,である」か「です,ます」かということですが,これも決まったルールがあるとは思いません。ただ,推薦文に限らず,お仕事でものを書く時にはふつう常体なので,推薦文でもそのようにしています。

最終的には,校長先生の名前で出す文章なので,校長がOKすればどちらでもいいのではないかと。

どちらにしても,冗長な文章は好まれませんので,ワンセンテンスは短くすることを意識しておきたいものです。

 

・書かれる相手について

自分の学校の在校生であれば,「本生徒」などとしたりしますし,よりフラットに「志願者」という言い方をすることもあります。大学側が受験生のことを何と呼んでいるのかで使い分けるかどうかを見たりします。

 

・「貴学」

受験生が自己推薦書みたいなのを書いてくると,「貴学〇〇学部〇〇学科に」などと書いていることがありますが,基本的に入試というのは学部が主体としてやっているものなので,「貴学」だけで学部・学科を含んでいると私は考えています。つまり「貴学」だけで済ませます。

 

 ④具体的な表現を

 人によってはついつい文学的な表現を使ってしまう人がいますが,推薦書とは「相手(大学)に受験生のどういうポイントを見てもらいたいか」を伝えられるものです。そのため,私が書く場合には,評価してもらいたいポイントを具体的に表現することを心掛けています。

例えばこういった具合です。

「志願者は,常にたゆまぬ努力をもって学業に専念し,成績も学年で上位に位置している」

と書けば,「勉強頑張っているんだな」とは思うでしょうが,

「志願者は,学業に対し堅実な姿勢を持ち,特に英語に関しては最上位の成績を収めている」

 としてみれば,英語には自信がある生徒なんだな,という情報も受け取ることができます。

もしも英検やその他の外部資格でCFER B2(※)以上の実績を持っているのであれば,そのことを今の文章に続けて記せば,「英語の力でうちの大学に挑戦してきているんだな」というはっきりとしたメッセージになるでしょう。

(※)英検であれば準1級,TOEICであれば600点以上,IELTSであればオーバーオール5.5くらい

 

課外活動を挙げることもあるでしょう。ただし部活動のようなものであれば,何らかの賞を取っていればそれはそれでアピールポイントになるでしょうが,大学出の学びに必要な能力に直接つながるかどうか,そこをきちんと明記しなければなりません。

つまり,極端な話,例えば時速160kmを投げられる受験生について,

「チームの一員として,部の甲子園出場に貢献した」

というのは確かにすごい話ですが,大学で野球をやるのでもない限り,ふつうは関係ない話です。

一方で,万年ベンチ君であっても,

「レギュラーになることはかなわなかったが,チーム内の情報共有に意識を払い,部の円滑な運営に貢献した」

ということであれば,コミュニケーション能力や(不遇な状況にあっても)前向きさを失わない姿勢などを読み取ることができると思います。

他にも,継続的なボランティア活動に参加していた経験などがあれば,非常に高く評価されることは間違いありません(反対に,1日だけ(1回だけ)の経験は,それが人生を変えるきっかけとなった出来事というのでなければ,あまり推薦理由にはならないように思います)。 

 

いずれにしても,受験生のどんな実績が,大学が評価するポイント(積極性,行動力,コミュニケーション能力,社会的関心の高さ, 専門領域についての深い知見…などなど)となるのか,なるべく端的に,具体的に表現するようにするとよいと思います。

 

 なお,当然のことですが,ウソの内容を記載してはいけません。なかったことをあったかのように書くのは,もってのほかです。

 

4.最後に

ここまで縷々書いてきましたが,そうはいっても推薦書で合否が決まるようなことは(たぶん)ありません。心を込めて書いてあげるのは当然ですけれど,私の場合,そこまで気負う必要もないと思っています。

ひとまず今日はここまでとしておきますが,近いうちに,ちょっとした技(?)とか,サンプルの文例などもご紹介できたらと思います。

 

お付き合いいただきありがとうございました。

それにしても,今日は広島の原爆投下の日でしたね。令和最初の祈念式典とかそうですが,元号が変わろうが,かつての「われわれ」が経験してきたことを心に留めておくことは,やっぱり大切だと思っています。亡くなられた方には安らかであられますよう。