西洋近代美術(主に絵画)の歴史⑤19世紀その1
こんにちは。
しばらくこのシリーズも間隔が空いてしまいましたが,もうちょっとがんばります。お付き合いいただければ幸いです。
1.ロマン主義
さてそろそろ,時代も19世紀に入ってまいります。ときはフランスで大革命が起こるころ。思想的にはそれまでの啓蒙思想の蓄積が革命とともに一気に広まっていくわけですが,理性を最も重んじる思想=合理性が普遍的な価値観として,ナポレレオンとともにヨーロッパ全体に広まっていく一方,それまで抑圧されてきた個人の感情などを重視する思潮が次第に強まってきました。恋愛とか情念,個別の民族が持つ歴史に重きを置く考え方,ざっくり言えばそれがロマン主義(ロマン派)です。
そういった背景から生まれたスタイルなので,ドラマティックな作品が多いように思います。
美術の世界だけでなく,文学・音楽など,様々な分野にわたってアーティストが現れました。
で,美術の話に絞ると,ロマン派の画家といえば,やはりまずドラクロワが挙げられるのではないでしょうか。彼の作品としては,次のものが有名ですね。
・「シオ(キオス島)の虐殺」
:このころ起こったギリシア独立戦争にインスパイアされて描かれた作品。この戦争ではイギリスのバイロン卿が義勇軍に参加したりと,何かとロマン派が関わります。
・「民衆を導く自由の女神」
:こっちはフランス七月革命の「栄光の3日間」を描いたものとして有名,というより,どうしても下世話な視点で見てしまいますごめんなさい。
スペインではゴヤが現れますね。たいてい有名どころはプラド美術館に収蔵されています。
・「5月3日」
:いわゆる「スペイン反乱(半島戦争)」でのフランス軍の圧制に対するゴヤの告発の絵。左側にいる,今にも処刑されようとしている人物にスポットが当たっていますが,この人が両腕を大きく左右に開いていること,そして手のひらに何かのしるしがあることにご注目。イエスになぞらえているんですね。高校生にはぜひ知っておいていただきたい。
:どちらも有名な作品ですね。よい子は見ちゃいけない(?)作品です。
ほか,ロマン派の画家としては,山下達郎「ターナーの汽罐車」の元ネタになった,ターナーの「雨,蒸気,速度」なんてのもありますかね。
2.自然主義・写実主義
19世紀の半ばくらいから後半にかけて,ロマン派の盛り上がりが失せていくのに対し,自然主義とか写実主義とかいった流れが現れます。
・自然主義
「自然物の持つ美しさ」を描く,と言われますが,美術の世界に興味がある人からすれば,歴史の教科書的に「自然主義」と呼んでいるのは,バルビゾン派を指すと考えてよいかと。ここでは「自然主義」といえばミレーの名前を思えといていただければよろしいかと思います。
ミレーといえばビスケットではなくて(おいしいですよね),「落ち穂拾い」「種蒔く人」「晩鐘」といった,農民の素朴な生活を描いた作品が有名ですね。
例えば「種蒔く人」はゴッホの模写でも知られますし,岩波書店のマークにも使われていますし,「晩鐘」では遠くからかすかに響いてくる協会の鐘の音が聞こえるような気がします。
ほかにこの手のスタイルで知られる人といえば・・・コローとかでしょうか。
※ミレーといえば,「オフィーリア」で知られる人もありますが,もちろん別の人です。そちらはラファエル前派の人。
・写実主義
対象をありのままに描く,リアリズムの手法を旨とするスタイルです。たいてい,教科書等ではクールベの「石割り」が代表作としてあげられているかと思います。第二次大戦中のドレスデン爆撃で消失したというこの作品,私は正直なところ,なんとも思わなかったと言うか,これのどこが「写実主義」なのか理解できなかったのですが,長じてクールベについて調べてみると,なるほどリアルだ,と思わざるを得ませんでした。
何がどうリアルなのか?自分で調べてみてください。
次回は印象派についてです。
では。